2012年1月20日金曜日

映画に学ぶビジネス人生

『映画に学ぶビジネス人生』 月刊誌スタッフ・アドバイザーのウェブサイト海外ビジネスコラム(Bilingual)に以下の記事を執筆しました。
http://www.staffad.com/bilingual/shinbori/shinbori05_ja.html

「映画に学ぶビジネス人生」

●企業もの映画は面白い:

同年代の男性と比べて、私はかなり映画を見るほうだろう。映画館で観た本数を数えてみたら、一昨年は47本、昨年は43本だった。アクション、恋愛もののジャンルが好きだが、企業を扱った映画も好きだ。ビジネス交渉、会議の進め方、上司と部下の会話とか、自分の仕事の参考になるので、より興味をもって観ることができる。また、企業映画を通じてアメリカ社会を知る新鮮な資料にもなる。

印象に残っている映画は、エンロン事件を扱った「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」、自社の不正(価格協定)を内部告発したマット・デイモン主演「インフォーマント!」、マネーゲームを描いた「「ウォール街」とその続編「ウォール街2/マネー・ネバー・スリープス」などがある。


●リストラ請負宣告人が主人公な映画:

このお正月休みにDVDを観た。2年ほど前に公開された「マイレージ・マイライフ」企業リストラをテーマにした映画だ。アカデミー賞にもノミネートされた。2枚目俳優ジョージ・クルーニーは映画の中でリストラ請負宣告人の役を演じる。リストラ請負宣告人は企業と契約し、ファーストクラスで米国中を飛び回りながら、クビキリを告げる。彼の目標は、航空会社のマイレージを1000万マイル貯めることだ。 

 従業員に解雇を伝えるのは、本来その企業の上司や人事マネージャーの仕事。しかし、誰しも憎まれる役どころは敬遠したい。ドライと思われているアメリカ人でもそうなのである。そこで嫌な仕事・面倒な仕事は、その道の専門家にアウトソースしてしまう。アウトソーシングを積極的に活用するいかにも米国式経営だ。

 リストラ請負宣告人に突然解雇を告げられた従業員は怒りに震える。その怒りを爆発させようにも、相手が請負人となると、ぶつけようもない。上司や人事マネージャーにとっては、自ら手を汚さずリストラ通告できるので、リストラ請負宣告人はとても重宝がられる。


●解雇通告すること、されること:

リストラ解雇は通告される人間の心に大きな痛みを与える。しかし通告する人間にとっても普通は心が痛む行為である。

 15年ほど前になるが、突如私自身が解雇宣告を受けた。さらに翌日は、私が解雇宣告を受けた立場から、今度は解雇宣言を言い渡す立場の人間にならねばならなかった。

 当時はインターネットバブルが終りかけの時代。私は米国シリコンバレーにあるベンチャー企業R社の日本法人の社長をしていた。大手広告代理店D社との販売提携契約を結び、ビジネスとして日本で立ち上がりを見せ始めた時でもあった。 

 予告もなく、突然米国本社の副社長が東京オフィスに顔をだした。そして私に告げた。「我が社は、来月末をもって会社を清算する。予定していた第3者割り当て増資がうまく行かなくなった。事業資金が不足し、このまま事業を続けることはできない」と告げた。米国本社が清算するということは、日本法人もシャットダウンするとういう事。即ち、私自身が解雇されること意味する。突然の通告で、気が動転した。

 日本法人の清算となると、私自身だけの解雇ではない。26名いる社員全員が職を失うことになる。社長の私の役目のひとつは、社員に 「来月会社が清算されること、そしてあなたたちは来月末で退職することになります」という事を伝えることでもあった。 

 私はすぐさま弁護士と会い、今後どのように進めるかを協議した。社員も私も大変に辛い経験をした。しかしどうにか期限までに仕事を終えることができた。私の人生の中で、この時の痛みはいまでも忘れられない出来事である。 

 ●映画には人生が詰まっている:

映画「マイレージ・マイライフ」の中に、ジョージ・クルーニーがリストラされた人達を集めてスピーチをするシーンがある。Whats In Your Backpack?  人生をバックパックにたとえて 「バックパック(リュックサック)の中にあなたは何を詰め込んででますか?」 という問いかけのスピーチだ。映画の原題は「up in the air」。英語の慣用句では、「何も決まっていない」「皆目見当がつかない」といった意味だ。映画の最後の、飛行機から見た雲のシーンがその含意を示唆している。

 映画を通じて、自分の人生を見つめなおす機会をもつこともできる。作品の登場人物は様々であり、描かれる人生も様々である。混沌とした現代に生きている我々は、進むべき方向性を模索している。映画のなかの人物や出来事から、何かしら方向性を見出せることもある。そんな探究心をもちつつ、これからも映画館に足を運ぼうと思っている。



0 件のコメント: