2011年5月23日月曜日

目標設定能力が語学学習成功のカギ! ~ちょっと不真面目の目標が上達する?~

月刊誌スタッフ・アドバイザーのウェブサイト海外ビジネスコラム(Bilingual)に以下の記事を執筆しました。 日本語 http://www.staffad.com/business/shinbori07.html

目標設定能力が語学学習成功のカギ!
~ちょっと不真面目の目標が上達する?~

●イタリア、今は亡きオリベッティ社のタイプライター
海外旅行をしていて、現地の言葉で買い物したり、道を聞いたり、食事をしたりできたらどんなに楽しいだろうとは誰もが思う事。そうは思っても、語学はちょっとやそっとではモノにできないのが悩みだ。イタリア・フランスの田舎とか、東欧だとまるっきり英語が通じず、苦労することが多い。

25年前の事、イタリアへビジネス出張する機会があった。初めてのイタリアだった。北イタリアのコモ湖に近いホテルでIT関連の会議。欧米からDEC社、アポロ社、MIPS社、フィリップス社、オリベッティ社そして日本からはソニーが参加。会議の幹事役をホスト国のオリベッティ社が担当した。

オリベッティと言えばタイプライターで有名な企業だ。製品のデザインは素晴らしく、文化活動も盛んで、当時、フィアットと並ぶイタリアの一流企業だった。

余談だが、先日20歳代前半の若者に、オリベッティのタイプライターを知っているかと尋ねた。その若者は知らないという。タイプライターは映画や雑誌の写真で見ただけで、本物を見たことないという。ましては、オリベッティという会社名も聞いたことがない、と言う。タイプライターはテレックスと同じく今や忘れられた過去の遺物になっている。

●北イタリアでは、英語が通じないレストランが多い・・
コモ湖に近いホテルで、3日間缶詰になって会議が行なわれた。会議は英語だったが、苦労しながらも、なんとか切り抜けることができた。しかし、ホテルから一歩外にでると英語が全く通じない。レストランに一人で入った時は、メニューも読めず、食べたいものが食べられない。

たまたまあるレストランでは厨房に英語が少し話せる人がいた。そして、イタリア式食事について教えてくれた。「夕食にカフェラテをオーダーしてはいけない。カフェラテは朝飲むものである。午後から飲むのは,イタリアではエスプレッソと決まっている。カフェラテを夕食後にオーダーするのは、米国人と観光客だけだ。」と。 パンと一緒にバターが付いてこなかったので、「バターが欲しい」と言うと、「バターはパンに付けるものではない。厨房で料理に使うものだ。パンに付けるのはオリーブオイルだ」という。生地が非常に薄いピザが出てきたので、ビザはてっきり厚いものだと思ってビックリしていると、「厚い生地のピザは米国のピザだ。あれはイタリアではピザと呼ばない」と言われた。

今では日本中にイタリア料理が浸透し、オリーブオイルにも薄焼きピザにも戸惑うことはなくなった。しかし当時は私にとっては、すべてが初めてで学ぶことばかりだった。そんな経験があったので、次回イタリアに行く時は、前もってイタリア語を学び、レストランで食事をする時はイタリア語で注文したいと思っていた。

●目標はちょっと不真面目の方がやる気になる??
4年前のお正月に「今年の秋にイタリアに遊びに行く」と言う計画をたてた。目的地は、パルマと決めた。パルマはミラノから列車で1時間半ほど南に下った街。パルマハムやパルミジャンチーズなどでその名を知られた食文化で有名な街だ。美味しいレストランが多いという。サッカーの中田英寿選手がここのチームでプレイしていたこともある。

そこで、秋のイタリア・パルマ訪問に向けて、イタリア語の個人レッスンを受ける一大決心をした。私を担当してくれることになった先生はU先生といって、28歳で顔の彫が深く長身でカッコいいイタリア人男性。ベニス大学で日本美術を学び、ひと月前に東京に来たという。

私はまずU先生にイタリア語を学ぶにあたっての私の目標を話した。「イタリアのパルマに今年の秋に10日間いくつもりだ。イタリアでは美味しいものを食べたい。レストランでは、お店の人とちょっとした会話とイタリア語で食事を注文できるくらいになりたい」と述べた。

U先生は「わかった。まかしとけ!!」と胸をたたいた。さらに先生から、こんなことも目標につけくわえたらどうかとの提案があった。それは「イタリアでは街を歩いている女性に声をかけるのが礼儀である。女性に声をかけられる位の会話レベルになろう。」 私にとって、もちろん反対する理由はない。それくらいのレベルまでにイタリア語をうまくしてくれるなら本望というものだ。

こうして、U先生との個人レッスンが始まった。毎週土曜日朝10時から90分のレッスン。パルマに行く直前まで続いた。具体的な目標が定まっていると、生徒にとっては少しでも目標に近づきたいとやる気がでる。そして先生も生徒のサポートし甲斐があるというものだ。U先生はテキストブック以外のことも私に教えてくれた。

●目標は、達成度のチェックが必用・・
8ヶ月に近い個人レッスンの成果はどうだったのであろうか??日本から飛行機を乗り継ぎ、ミラノ空港に降り立った。さらにミラノ市内から列車でパルマに到着した。そして街中のこじんまりしたイタリアンレストランに入った。ランチ時だったので、サラダ、ピザ、ビールを注文した。もちろんイタリア語での注文だ。レストランの店員さんとも、「好い天気ですね」という位の会話もかわすことができた。

私は、隣に座っている家人の顔をちょっと自慢げに見た。「どうだ! 8カ月の個人レッスンで学んだイタリア語だ。まんざらではないだろう」という表情をして・・・。すると家内が口を開いた。「随分と高いピザ代についたわね・・」との返事だった。

レストランでのイタリア語会話は目的を達したので、もうひとつの目的「街を歩いている女性に声をかける」を実践しようと心待ちにしていた。 しかし、迷子になっては大変とばかり、いつも家人がそばにくっついていたので、試す機会がなかった。

「ブランド品でも買ってくれば・・」とでも言えば家人は喜んで一人で買い物に行ってくれただろうに・・・後悔先にたたず。返す返すも残念であった。しかし目的を達することができても、後からカードの請求書がきて、実に高いイタリア語会話実践編になっていたかもしれない。

ともあれ、語学を学ぶには目標を持って学ぶことが大切である。

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