月刊誌スタッフ・アドバイザーのウェブサイト海外ビジネスコラム(Bilingual)に以下の記事を執筆しました。
http://www.staffad.com/bilingual/shinbori/shinbori03_ja.html
『日本のリーダーシップを高めるには』
●なでしこジャパンに見るリーダーシップ
今年、最も感動したことのひとつは、「なでしこジャパン」のサッカー女子ワールドカップ(W杯)初優勝である。菅直人元首相は、首相官邸に「なでしこジャパン」の表敬訪問を受けた際に、代表主将の澤 穂希 選手にこう語ったという。「うまくチームをまとめ上げた。今から勉強して間に合うか分からないが、私もそういうところを学びたい」と澤選手のリーダーシップを称賛したことは記憶にまだ新しい。
日本の政界では、リーダーシップの不在は、いまに始まったことではない。今回の震災という危機でその深刻さが改めて浮き彫りになった感がある。その結果、国債の格付けもスペイン、イタリアを下回り、先進国では最低ランク。G7会議の中でも、日本の存在感がなくなってきた。片や、米国をはじめ、ロシア・中国・英・仏など主要国をつかさどる人々は、それなりのリーダーシップが備わった人が選ばれている。
●リーダーシップとマネジメントの違い
米国では、昔からリーダーシップの研究が盛んだ。ダイヤモンド社のハーバード・ビジネス・レビュー9月号では、「偉大なるリーダーシップ」の特集が組まれている。その中のひとつの記事にジョン・P・コッター教授の「リーダーシップとマネジメントの違い」が掲載されている。
その記事によると、マネジメントは「普通の人が、普通のことを、普通以上のパフォーマンスで行える」環境や制度を整えること。 即ち、マネジメントとは「組織づくり」「資源配分」「統制」「問題解決」であるそうだ。
一方、リーダーシップは、組織メンバーと組織文化に働きかけ組織を動かすこと。 即ちリーダーシップとは「変革」「方向づけ」「動機づけ」であり、「人々を一体化させる」ことだそうだ。
●ボトムアップ型の経営ではリーダーはいらない
日本では、リーダーシップとマネジメントを混在させて同じものだと考えがちである。ボトムアップ型の経営できたため、もともとリーダーなどという概念がないに等しいのかも知れない。日本という国は、リーダーがいなくても、官僚や経済界のマネジメントが働いている。何か問題が起きても何とか解決策を導き出し、一応は国として機能してきた。
しかし、これからはそうはいかない。少子高齢化、放射能汚染、エネルギーなど、問題が山積みである。 単に問題解決では済まない。日本を改革していくためのリーダーシップが必用だ。
●アップルに見るリーダーシップ
米国では、7月にアップルの時価総額が米エネルギー最大手エクソンモービルを抜き、初めて米企業で首位になった。時価総額では
アップルは今や世界最大の企業だ。
アップル本社があるシリコンバレーのクパチーノに、昔、頻繁に通った。私は当時ソニーで3.5インチのマイクロ
フロッピー関連の仕事をしていた。1984年アップルのマッキントッシュが初めてマイクロフロッピーを採用した。それを皮切りにマイクロフロッピーは世界標準となった。当時の社長はスティーブ・ジョブズだった。
しかし、その後アップルは低迷し、スティーブ・ジョブズはアップルから一時追放される。アップルは倒産しかかった。15年前それを立ち直らせ、世界一の企業にしたのは最近CEOを辞任した彼の圧倒的なリーダーシップと美学によるところが大である。
●ジョブズ流リーダーシップ
スティーブ・ジョブズは最初の病気療養から復帰した2005年6月 スタンフォード大学の卒業式で伝説的な記念スピーチをした。誕生間もなく養親に引き取られた経緯や起業について、生への想いや自身が半生から得た教訓などについて語った名スピーチである。
「みなさんに与えられた時間には、限りがあります。ほかの人の人生を生きて、時間を無駄にしないでください……他人の意見という雑音に、あなたの内なる声がかき消されないようにしてください。そして、いちばん大切なこと。どうか勇気をもって、自分の心と直感に従ってください。」
日本という国も、与えられた時間に限りがあるかも知れない。ひとりひとりが勇気をもって、自分の心と直感に従って生きていけば、新しいリーダーが生まれるはずである。日本のスティーブ・ジョブズが生まれてくるのを期待しよう。
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