月刊誌スタッフ・アドバイザーのウェブサイト海外ビジネスコラム(Bilingual)に以下の記事を執筆しました。
日本語 http://www.staffad.com/bilingual/shinbori/shinbori01_ja.html
「アメリカ・ビジネス・パーソンの意外な側面」
~ビジネスライク、自己主張は俗説。本音と建前を使い分ける~
●アメリカ・ビジネス・パーソンに対し日本人が持つ先入観
アメリカ・ビジネス・パーソンと日本のビジネスパーソンとの違いは何だろうか。日本人の友人たちに尋ねてみたことがある。すると、次のような答えが返ってきた。
1) アメリカ・ビジネス・パーソンは、ビジネスライクだ。ビジネスはビジネス、パーソナルはパーソナルときちっと分ける。
2) アメリカ・ビジネス・パーソンは自己主張が強い。自分の意見を常に押し通す。
3) アメリカ・ビジネス・パーソンは日本人のように建て前と本音を使い分けない。
たぶん多くの日本人がこのような先入観をもっていることだろう。しかしエグゼクティブ・レベルのアメリカ・ビジネス・パーソンと仕事をしていると、これらはステレオタイプの表現だとわかる。彼らは決して、ビジネスライクとは限らないし、相手の話を良く聞く。「本音と建前」の使い分けは、日本人の専売特許とは限らない。彼らもしばしば本音と建て前を使い分ける。
●プライベートな時間をコミュニケーションに使う
20年ほど前、パソコンのマルチメディアの仕事をしていた時のことだ。マルチメディアの世界標準をつくろうと、米国のPCメーカーやソフトメーカーに頻繁に訪問した。自社で開発した技術や特許をその標準に使って貰おうと、PCメーカーやソフトメーカー各社がそれぞれ思惑を持っている。
彼らはモチベーションがとても高く仕事熱心だ。ちょっとやそっとの事では妥協しない。しかし、意外なことに出くわした。昼間の会議が終わって、「さて仕事の話の続きは明日に....」と思っていると、「これから一緒に飲みに行こう」とか、「家に夕食に招待したい」と誘われることが良くあった。 週末を挟んでの会議だと、ゴルフとかクルージングに誘われる。
彼らにとっては大切なプライベートの夜や週末の時間を取引先やビジネス交渉相手の人間のために使うのだ。だからといって、夜や週末に仕事の続きの話をする訳ではない。
私が気がついたのは、彼らにとって仕事を成功させるための最も重要なファクターは人間関係だということだ。良好な人間関係を築けば、それが仕事を成功に導くと考えている。
そのために、仕事のみならずプライベートな時間を使って、如何にコミュニケーションをとるかを考えているのだ。社外の人のみならず、同じ会社、同じ部門に属する人々に対しても上手くコミュニケーションをとることを常に考えている。よりよいコミュニケーションこそが、仕事を成功に導く要であり、組織をうまく動かす術だということを知っている。
企業のエグゼクティブになると、ビジネスとプライベートの境がなくなってくる。飛行機のファーストクラスで隣だった人が、明日のM&Aの相手になるかも知れない。エグゼクティブになるほどビジネスライクな人間関係ではなく、良い意味での公私混同型の人間関係をもつようになる。
アメリカ・ビジネス・パーソンは自己主張が強いというのは俗説だ。もちろん彼らは良くしゃべる。しかし決してしゃべるばかりでない。アメリカ・ビジネス・パーソンのコミュニケーション術は、よくしゃべり、よく聞き、良く褒める。彼らはとにかく相手を褒めることに徹する。
●褒めるのが上手なビル・ゲイツ会長
マイクロソフトのビル・ゲイツ会長がまだ30歳前半だった頃、東京で技術会議を持った。私が勤務していた企業の開発エンジニア(日本人)を交えての会議だった。ビル・ゲイツ会長は、その会議でエンジニアに向かって「It's a Great Idea! Super!」を連発。エンジニアや我々のアイデア・発言をとにかく「素晴らしい」といって褒めるのである。ビル・ゲイツ会長に「スーパー! 素晴らしい!」といって褒められると悪い気はしない。しかし、そのあとに「ここをこうしてくれると、もっと良いのができそうだが…」と注文をつけてくるのである。優秀なエグゼクティブほど、自己主張もするが、良く相手の話を聞き、人を上手に褒めるものだ。
●本音と建前の使い分けは世界共通
本音と建前は日本人の専売特許と思われているがそうではない。アメリカ・ビジネス・パーソンも、うまく使い分けている。エグゼクティブともなると、クリスマスに自宅に部下や同僚を招いてのパーティーを良く開く。職場の仲間同士のコミュニケーションを図るためだ。こういう社交の場では、ゲストと意見交換をしている時、相手の意見が自分と異なっても決して”I don't think so !!" などと言わない。たいていは、辛抱強く相手の言うことを聞き、本音は明かさないものだ。社交の場では、たとえアルコールがはいっていても、部下は上司に本音を言わないのがルールである。日本でも無礼講だからと宴会で馬鹿正直に上司に本音をいわないように、アメリカでも良識あるビジネスパーソンは本音と建前を使い分けている。
2011年5月23日月曜日
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